マーケティングソリューション

dmenuマーケティングソリューション

ドコモデータ×自社データに秘められた顧客創造ポテンシャル -データ拡張によるデータマーケティング実用性について-

【中編】自社データ×プラットフォーマーデータによる活用の現状

登壇者 加藤 翔
ドコモデータを活用した新規サービス企画、運営、開発を担当し、プロジェクトを牽引。
ドコモ版データクリーンルームであるdocomo data square(dds)の立上げからPMとして推進。
株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部 プロダクト推進担当 主査


登壇者 前川 駿氏
テレビCMとデジタル広告の統合基盤 STADIAの開発を担当し、プロジェクトを牽引。
現在、Cookieフリー時代の新たなデータ基盤 データクリーンルームの開発支援と導入を推進。 特にデジタル販促領域におけるデータ利活用の推進に注力している。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター
フラットフォーマーデータ部長


登壇者 古池 茜氏
GPSやモバイルキャリアデータなどの位置情報を用いた人流分析や、「TV×デジタル×OOH」のトリプルメディアを活用したオンオフ統合プランニング~効果検証に携わる。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プランナー

パート2では実際にクライアント企業様のデータと「データクリーンルーム」のデータを掛け合わせることで、現状どのような活用がされているのかを伺います。

データクリーンルーム活用の現状

[前川 駿]
クライアント企業様の多くが、1顧客を1つのID(1ID)で管理できていません。たとえばあるデータは実店舗でEメールや電話番号を取得する、またあるデータはオンライン上で広告識別子を取得するなど。このようにデータがバラバラでも、「データクリーンルーム」では、プラットフォーマーIDを基軸にさまざまなデータをつないで活用できます。

■資料14:活用の現状①

また、自社で購買のデータが収集できない(たとえばメーカー企業など)場合でも、カード事業者やキャリアといったプレイヤーの保有する購買データと連携することで、今まで把握できなかった購買起点のデータ分析や今後のプランニングが可能になります。
[加藤 翔]
Cookieレスの前の時代ではできなかったことですね。逆に以前はできなかったことが今後できるようになるのでしょうか?
[前川 駿]
はい。Cookieを活用した場合、メーカー企業様は購買データを収集できません。しかし「データクリーンルーム」を使えば、Eメールや電話番号などの個人データを元に紐づけられるので、購買データまで取得可能になります。

■資料15:活用の現状②

また、Cookieは本来3か月くらいでほぼ消失し、基本的には当該キャンペーンの最適化にしか使えませんでした。しかし「データクリーンルーム」上のIDは、顧客が利用サービスを変更したり、IDを変更したりしない限り、IDは変わりません。複数のキャンペーンを超通じて、継続的に顧客の動向を分析することが可能です。
つまり、今まで単発施策のキャンペーンで終わっていたものが、新規顧客の獲得からCRMまでつなげられるというメリットがあります。

■資料16:活用の現状③

活用の現状を簡単にサマライズすると、大きく以下のような3つのメリットがあります。
① さまざまなデータをID単位で掛け合わせることが可能になった
② 購買を起点とした指標が見られるようになった
③ ストック型マーケティングで顧客育成(CRM)が可能になった

■資料17:活用の現状④

■資料18:パート2サマリー①

「データクリーンルーム」の活用を広げるために-「TORABIS」の可能性-


[前川 駿]
3つのメリットからもわかるように、既存顧客に対して新たな接点でアプローチが可能になり、かつ今までできなかった方法で新規顧客と接点を持つことができます。従来のマーケティングデータでは最適化に合わない顧客もいましたが、プラットフォーム事業者データを活用することで、最適化に合わない顧客にもアプローチが可能になりました。
[加藤 翔]
たしかに、多くのクライアント企業様から、顧客のデータがばらばらで、名寄せさえ自分達でできないというお話を伺うことがあります。せっかく集めたIDもうまく活用できないという悩みです。しかしそのような企業様にも「データクリーンルーム」を活用していただければ、今まで収集したIDを活用できそうですね。
ただし、現在は感度の高いクライアント企業様や、早急に課題解決しなければならない企業様が「データクリーンルーム」を活用されているように思います。まだ多くの企業様で活用されていないのはどういう理由でしょうか?
[前川 駿]
一つには、まだメリットをご理解いただけていないと思います。もう一つには、いざ活用しようと思うとすぐに使えるデータがないことです。わかりやすく言うと、使えるデータがないというより、お持ちのデータを時間と工数をかけて使えるデータにしなければならない、という意味になります。そこで我々は、異なる仕様の「データクリーンルーム」の一元的な活用を可能にする業務システムを構築しました。
「データクリーンルーム」は複雑で分析が難しいと思われがちですが、電通では「データクリーンルーム」をさらに簡単にした「TOBIRAS」という簡易ツールを構築しています。クライアント企業様には、「データクリーンルーム」をより簡単で安心安全に活用できる基盤をご用意しています。

■資料19:TOBIRASの概要

少し補足しますと、「TOBIRAS」のようなシステムやプロダクト群が必要な理由は以下の通りです。
・ 「データクリーンルーム」実行するには、データサイエンス技術の専門性が必要
・ 企業の顧客データのプライバシーを保ちながら、任意の言語(Python、SQL、Java、Scala)を用いてワークロードを技術者が実行する
・ 上記のような実作業には工数がかかる(コストが増える)

[加藤 翔]
クライアント企業様が「データクリーンルーム」を活用するには、かなりハードルが高いので、電通としてはサポートするシステムを構築したということですね。
[前川 駿]
そうです。なるべく企業様の負担が少なくなるようなフローを考えます。またクライアント企業様に「データクリーンルーム」を活用していただく場合、事前に企業様の事業の課題や目的をヒアリングしますが、結果的に「データクリーンルーム」が必要ないケースもでてきます。その場合は「データクリーンルーム」は除外し、まずはクライアント企業様の課題をしっかり把握し、場合によっては従来の方法をご提案します。
一方で、クライアント企業様が1IDはないが保有しているデータを活用したい、購買データ追跡したいというご希望をお持ちの場合もあるでしょう。また、単発でなく継続的にキャンペーンデータを把握したいというご希望があれば、「データクリーンルーム」をご提案します。
[加藤 翔]
世の中に「データクリーンルーム」として一番知られているのがGoogleのAds Data Hubとか、いわゆるGAFAが提供するものだと思いますが、日本国内でも多くのプラットフォーマーが提供を始めていると思います。
このような状況の中、電通としてはご提案したクライアント企業様の課題は何だと思いますか?またなぜ「データクリーンルーム」の活用が広がりにくいのでしょうか?
[前川 駿]
電通は、クライアント企業様の課題に対して「データクリーンルーム」とそのソリューションを、「TOBIRAS」を通じて必要な組み合わせをご提案しています。
企業様ごとにニーズは違いますが、共通した課題が2つあります。1つは、
リッチなデータを保有していても、ただ保有しているだけでは課題解決できない
ことです。クライアント企業様は1stPartyデータが欲しいというより、今見えている課題解決を優先したいというジレンマに陥ります。結局どれほどリッチなデータを保有していても、使えるデータにしない限り課題解決できません。

もう1つは、データ利活用のさまざまな出口を整えなければならないことです。たとえば広告出稿用データ・CRMデータ・顧客分析データなど、活用先はさまざまあります。しかし、さまざまな利活用の出口が整えられないのは、運用体制がない・コスト高・使用可能になるまで時間がかかる、といった企業様側の負担が大きいからです。以下の3つがクライアント企業様からよく聞かれるポイントです。
①データクリーンルームのデータがどの程度リッチなのか
②プラットフォーマーデータの出口はどれだけあるか
③データクリーンルームの使いやすさ(難易度など)

今後上記の3つのポイントに対し、企業様のご負担をなるべく少なくするために、さまざまなアプローチをしていくつもりです。

どのようなプラットフォーマーと組むべきか


[加藤 翔]
ドコモはキャリアとして、位置情報データだけでなく、dポイントやd払いなどのデータも保有しています。そのため、広告会社様とのリレーションの中でIDとしてデータを活用することもあります。ドコモの強みは、他のプラットフォーマーが持たない、位置情報や決済情報といったデータであることです。
また、メディアとの取り組みも重要です。一旦街に出てみると、TVやOOH、モバイルといった多種多様な環境があるでしょう。そのような複数のメディアを統合的に取り扱いできるのがドコモのメリットです。またドコモの「データクリーンルーム」では、電通さんにご協力いただきながら運用体制を敷き、分析までの工程を整えています。
[前川 駿]
ドコモさんのような「正確で確定的な大規模データ」を保有しているのは、多くの企業の中でも非常に珍しいでしょう。たとえば単純なデモグラデータを取得するとき、アスキングアンケートで聞くと回答率は25%以下が普通になります。また、アスキングアンケートに答えてくれる人は何かしらのバイアスがかかる(偏りがある)ので、他の企業様だと実質的に使えるデータは少なくなるはずです。

しかしドコモさんの場合、数千万規模のキャリアの属性情報が非常に魅力的です。たとえばデジタルの顧客設定の情報を持つLineさんであるとか、自社キャンペーンサイトにご応募いただいた顧客情報とか、各社さまざまなデータを保有している訳です。しかしドコモさんはさらに、顧客がリアルな店舗に行ったデータや実際に購買につながったデータまで保持しているので、かなりのアドバンテージがあると思いました。

プラットフォーム事業者様によっては、どれほどリッチなデータを保持していたとしても、データ活用の出口が自社の関係するメディアのみという閉じた状態であれば、クライアント企業様も「データクリーンルーム」を存分に活用できないこともあります。
その点ドコモさんは、コマーケティングというドコモさんのアカウントを使いつつ、たとえばYouTubeや他社媒体とも接続可能であることが、クライアント企業様から見ると非常に魅力的なポイントだと思います。

[加藤 翔]
ありがとうございます。実際、GoogleのAds Data Hubがよく使われるのは、Google広告の費用対効果を分析することが主流になっているからで、今後クライアント企業様はニーズに合わせてそれぞれのプラットフォーマーの「データクリーンルーム」を利用するようになると思います。そして、「データクリーンルーム」活用しながら課題解決の糸口を見つけていくようになるのではないでしょうか。

[前川 駿]
そうですね。現実的にはクライアント企業様の課題はまちまちです。しかし、次の3つのポイントはどのクライアント企業様でも共通の課題です。
①データのリッチさ
②活用出口
③使いやすさ

これらの課題を解決していくことが、我々の使命だと思います。
[加藤 翔]
クッキーレスの時代に伴って「データクリーンルーム」という概念が広まりつつあります。そして、今までできたことは形を変え、今までできなかったことが「データクリーンルーム」によって実現できるようになったことが理解できました。

■資料20:パート2サマリー②

→後編『ドコモが提供する新たなマーケティングの仕組み「docomo data square」と実績』に続く