マーケティングソリューション

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ドコモデータ×自社データに秘められた顧客創造ポテンシャル -データ拡張によるデータマーケティング実用性について-

【後編】ドコモが提供する新たなマーケティングの仕組み
「docomo data square」と実績

登壇者 加藤 翔
ドコモデータを活用した新規サービス企画、運営、開発を担当し、プロジェクトを牽引。
ドコモ版データクリーンルームであるdocomo data square(dds)の立上げからPMとして推進。
株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部 プロダクト推進担当 主査


登壇者 前川 駿氏
テレビCMとデジタル広告の統合基盤 STADIAの開発を担当し、プロジェクトを牽引。
現在、Cookieフリー時代の新たなデータ基盤 データクリーンルームの開発支援と導入を推進。 特にデジタル販促領域におけるデータ利活用の推進に注力している。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター
フラットフォーマーデータ部長


登壇者 古池 茜氏
GPSやモバイルキャリアデータなどの位置情報を用いた人流分析や、「TV×デジタル×OOH」のトリプルメディアを活用したオンオフ統合プランニング~効果検証に携わる。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プランナー

パート2まではCookieレス時代の「データクリーンルーム」の可能性と「データクリーンルーム」の活用の現状について解説していただきました。
パート3ではドコモの取り組みについてご紹介します。ドコモは2020年8月から「docomo data square」という「データクリーンルーム」を提供しているので、「docomo data square」とその事例について古池さんに解説していただきます。

「docomo data square」とは

[古池 茜]
私は「docomo data square」のセールスとデータ分析をしています。「docomo data square」は、電通の保有するメディアの接触データ(テレビやデジタル)と、ユーザー数8,900万人以上(2022年5月現在)ものドコモ経済圏のリッチなデータを掛け合わせて、マーケティングができる基盤です。
[加藤 翔]
さまざまなデータがあると思いますが、古池さんから見て特徴的だと思われるデータはありますか?
[古池 茜]
最も特徴的なものの一つは、ドコモならではの基地局データだと思います。人の動きをとらえる位置情報データは、他のプラットフォーマーにはない特徴です。また、アプリ利用ログなども一定の評価をいただいています。アプリ開発会社様の中には、広告会社に自社データの提出したくないものの、「docomo data square」の中なら自社データの提出なしにログデータを使って検証できるので、そこにメリットを感じているようです。そのようなことからも、位置情報データとアプリログが一番お問い合わせされるデータです。

■資料21:「docomo data square」とは


「docomo data square」では、以下の3つのサービスをご提供しています。
①0次分析 ②そして0次分析の結果をメディアプランニングや配信に生かす ③配信後の効果検証

0次分析はドコモのリッチなデータを活用し、市場把握や顧客理解を深めます。そして結果をデジタルだけでなく、TVCMやデジタルOOHといったオンオフ統合プランニングにつなげていきます。最後にマーケティングの究極のゴールである、来店・購買・アプリDLをKPIにしたPDCAが回せることが大きい特徴だと言えるでしょう。

■資料22:「docomo data square」でできること

「docomo data square」を活用した事例1

[古池 茜]
実際に「docomo data square」を活用した、大手飲食チェーンの事例をご紹介します。
クライアント企業様の課題は大きく2つありました。1つはコロナ禍でTVCMの認知はあるものの、店舗集客が捗らなかったこと。もう1つは商圏内や店舗周辺での送客認知・リマインド施策が不足し、売り上げが伸び悩んでいたことです。
そこで、dポイントの加盟店であることを活かし、購買をKPIにして商売MAXが実現できるプランニングメソッドをご提案しました。
「docomo data square」をマーケティングの中心に配置し、送客効果が見込めるメッセージSとデジタルOOHであるLive Boardの活用し、実際にdポイントを使って購買したかどうかを測定しました。

■資料23:飲食チェーン店様のお悩みと提案

■資料24:「docomo data square」を中心にした配信プラットフォームと購買データ

その結果、「docomo data square」を活用したことで、クライアント企業様のリーチ重視の広告出稿スタイルから、購買起点のプランニングやメソッドを型化してPDCAを回していくというスタイルに変化しました。

■資料25:購買MAXのメソッドを型化-dポイント購買ログを起点にしたプランニング

[加藤 翔]
「docomo data square」の中に購買ログがあるからこそ、購買をKPIにしてPDCAが回せるようになったという事例ですね。
[古池 茜]
その通りです。従来はキャンペーンを展開しても、実際に顧客が来店したことしかわからず、その後購買したデータまでは追えませんでした。しかし購買データまで把握できたことで、一番費用対効果がよかったメディアまで分析できました。

■資料26:実際の施策図

クライアント企業様はキャンペーンのために、TVCM・PR番組にはかなりの量の広告を投下されていました。そこで、同時にデジタル・OOH・メール広告などのリード施策を追加しました。
移動中のユーザーにデジタル広告を打つ、屋外でデジタルOOH(Live Board)による訴求を行う、来店の一押しのために店舗周辺でメール広告(クーポンの配信)を打ちました。

資料26は実際に「docomo data square」で分析したアウトプットです。横軸はリーチ量、縦軸は購買リフト率です。横軸は右に行くほどリーチ量が増加したことを示し、縦軸は上に行くほど広告効率がよいことを示しています。また、それぞれの項目の下に記載されている費用は、一人当たりの広告単価です。
この図の中にあるTVCM・PRを除いて比較すると、追加したリード施策の内、メール広告とデジタル広告は購買率がよく、費用対効果ではデジタルOOHが一番よいという結果になりました。
このように購買を同じ指標で比べると、一番効率がよかったメディアはどれか、次にどのメディアに注力すべきなのかが判断できるようになりました。

■資料27:「docomo data square」による実際のアウトプット図

[加藤 翔]
今までもTVやOOH、WEB媒体など複数広告出稿されたクライアント企業様はいらっしゃると思いますが、複数の媒体の効果を1 IDで分析できたのは画期的ですね。
[古池 茜]
ご指摘の通り、従来は複数の媒体を横並びで比較測定することはできませんでした。しかし今回このような形で分析できたので、クライアント企業様にも今回の取り組みはかなり価値を感じていただきました。
資料27は2つ目の結果です。左の棒グラフは購買率、右の線グラフは即時性を示しています。グレーのグラフは非接触者、ブルーはPR・TVCMの接触者、ピンクはデジタルOOHを追加したものです。記載されている購買率を見ると一目瞭然ですが、リード施策をマスメディアに重ね合わせたところ、かなり購買率が上がりました。

また、右の線ブラフは即時性を表しています。下のブルーの線はTVCMの接触者で、2日以内に購買された方はそのうち6%しかありませんでした。しかし、TVCMとデジタルOOHの2つのメディアに接触した方は、2日以内の購買率が24%までアップしました。この結果からも、マスアメディアとリード施策を組み合わせると、購買率の向上だけでなく即時性の効果がアップするので、キャンペーン初動の盛り上げに一役買ってくれることがわかりました。

■資料28:キャンペーンの結果-購買率と即時性

[加藤 翔]
今まで確認できなかったデータが、きちんと可視化されたのは、かなりメリットがありますね。単一メディアでフリークエンシー(広告への接触頻度)を高めるために広告投下量を増やすより、複数のメディアをうまく統合して使うことで、広告効果が高まることを証明したよい事例ですね。
[古池 茜]
今までは顧客が来店したことは判明したものの、今回のように来店から購買まで1IDで把握できると、次の施策は考えやすくなります。今回の例では、2日目の結果を見て、次はOOHの出稿を増やすという判断材料になります。
[加藤 翔]
単一の分析で終わらず、クライアント企業様のPDCAを回していくきっかけになりましたね。
[古池 茜]
クライアント企業様からのフィードバックとしては、一番よかったのは、「購買というKPIに対して各メディアを横並びで評価できたこと」だといわれました。そして限られた予算の中で、購買の効果を最も高められたことに高評価をいただきました。
そしてクライアント企業様には資料29のように、キャンペーンごとの訴求商品やカテゴリ単位の結果をノーム値(※)として溜め、PDCAを回して行きましょうというご提案をしました。

※ノーム値:同手法のアンケート調査から抽出された基準値。広告効果を示す指数に使われる。

■資料29:訴求商品やカテゴリごとにノーム値を溜めていくことが大切

「docomo data square」を活用した事例2

[加藤 翔]
「docomo data square」の活用事例として、非常に理解しやすい内容だったと思います。ただし、多くのクライアント企業様はキャンペーンを単発で終わらせてしまうように感じます。今後「データクリーンルーム」を使う場合、継続を促すためにどのような使い方をご提案すればよいのかお聞かせください。

[古池 茜]
ご指摘の通り、継続を促すことが我々の課題になるでしょう。その課題を解決する方法として、資料29のように実際に何度も「docomo data square」をご活用されているクライアント企業様の事例をご紹介します。
このクライアント企業様は、毎回のキャンペーンの結果をきちんとノーム値化し、貯めています。それにより、次のキャンペーンではどのメディアにどの程度の予算を配分するかをご提案しました。提案の内容を1行で表すと、以下のような内容です。

■資料30:ノーム値による購買を最大化する予算配分シミュレーション

資料31は実施の結果です。過去4回のキャンペーン結果から、最適なメディア予算配分を算出しました。総額予算2億円のうち、約0.26憶(13%)の広告投資先を変更したことで、統合リーチ率が約6.6%アップし、コンバージョン率も約5.9%上がりました。

これは、継続してご利用いただいているからこそ可能になった結果です。そしてこのような結果が得られるので、「データクリーンルーム」をマーケティング施策の中心に置かれるクライアント企業様も増えてきました。ただし、広告の効果を継続的に出すのは広告会社に求められていることなので、これからもきちんとデータを使ってクライアントカルテ(※)を解いていくつもりです。

(※)クライアントカルテ:顧客戦略台帳のこと。顧客とのリレーションシップを構築するプロセスを可視化し、把握する仕組み作りの元となる。顧客のあらゆる情報を集約したデータ。

■資料31:予算配分の投資先の変化

そして、クライアント企業様に継続的に「データクリーンルーム」をご活用いただくには、キャンペーンごとの結果だけを報告するのでなく、次の施策をセットでご提案することが大切です。

次の施策を実行し、よい結果が得られると、PDCAがうまく回るという好循環になります。そうなると、継続して「docomo data square」を活用しようという認識に変わるので、そこまで持っていければ長期的なマーケティングにつながるのではないでしょうか。

クライアント企業様にとって本当に重要な目的は、購買率の上昇や長期間にわたる施策の最適化、費用の最適化などを達成することだと思います。継続案件としてご提案し、その結果大きなメリットを感じていただけるように、クライアント企業様と一緒に伴奏したいと思います。

「データクリーンルーム」の未来

[加藤 翔]
古川さんの事例紹介から、「docomo data square」を活用したクライアント企業様の高評価の理由や今後の展望についてよくわかりました。そこで少し質問しますが、クライアント企業様が「docomo data square」を最初に導入するにあたり、ハードルはありませんか?
[古池 茜]
多くのクライアント企業様は「docomo data square」を使ってみたいけど、何から始めたらよいのかわからないとおっしゃいます。しかし「docomo data square」はあくまでデータ基盤であり、一手段にすぎません。そのため、クライアント企業様のビジネス課題を我々がきちんと理解して一緒に伴走することで、「docomo data square」を導入するためのストーリーをきちんと作り込む必要があります。

ストーリーがあれば、クライアント企業様のさまざまな部署との連携が生まれるでしょう。その流れができるように、我々がしっかりとクライアント企業様の課題を明確にし、データで解いて提案します。「docomo data square」を使うことが目的ではなく、クライアント企業様の課題という共通認識を持つことが一番重要だと考えています。

[加藤 翔]
我々がクライアント企業様の課題に対して、「docomo data square」と周辺ソリューションをうまく提案しながら、導入ハードルを下げていく必要がありますね。
今回の事例で、以下のようなことがわかりました。
・ 施策の中でオンラインとオフラインの両メディアのアプローチがあった
・ 顧客目線では日常生活のあらゆる視点に広告接点が存在する
・ 結果としてクライアント企業様のKGI・KPIへの貢献につながった


さて、最後に未来の話として、パート1で前川さんがお話された「ブランド認知」と「データクリーンルーム」についてお話していきましょう。
消費者は、ディスカウントやキャンペーンが展開されていれば、それが購買動機につながることもあるでしょうが、それよりもブランド認知のほうが重要ではないかと思います。たとえば、「ビールといえば〇〇社の製品」といった具合です。

消費者は、さまざまなメディアの広告や良質なクリエイティブから、自然と日常生活の中にブランド認知が醸成されるでしょう。その一方で、企業側も消費者にブランド認知をさせるには、継続的顧客理解とデータ分析が必要になります。
そして今後どちらも好循環でいるには、「データクリーンルーム」の環境整備とプラットフォーマーとして整備されたデータを提供し続ける必要があると思います。

[前川 駿]
Cookieフリー以降の時代になると、マーケティングの持つ意味合いは変わってくるでしょう。従来は製品を販売することに注力していましたが、今後は製品と社会との関係構築や持続可能な仕組みをどのように作り出すかが重要になってくると思います。
一方で消費者側も、情報を提供すれば今よりさらによい体験ができるというポジティブなイメージが浸透すればいいのです。ブランド認知というのは、企業と消費者のよい関係が構築されてこそ、醸成されていくものです。

ドコモさんが保有するデータは、顧客の日々の生活データ(行動データ)です。今後はそのようなデータを活用しながら、顧客に良質の体験や社会的価値を還元し続けていくことが最も重要なことだと思います。その結果、既存顧客は継続し、新規顧客に自然とリーチするのではないでしょうか。
これからはそのような好循環をドコモさんと一緒に作っていきたいと思います。その最初の取り組みが「docomo data square」というマーケティング基盤だと思います。

[加藤 翔]
マーケティングデータは、消費者から見ると理解しにくいでしょうが、良質の顧客体験を増やしていくことでその疑問を払拭できると思っています。ただし、実際に最適なタイミングで良質な顧客体験を提供するには、かなりハードルが高いと思っています。前川さんはどのようにお考えですか?

[前川 駿]
最適なタイミングで最適な製品を提供する環境は、すでに構築されていると思います。ただし、消費者がそれを認識していないか、またはその環境にありがたさを感じていないだけだと思います。
これは一方的に消費者に気付かせるという意味ではなく、消費者側も「体験」してはじめてわかるのではないでしょうか。いくら企業側でよい環境を整えても、消費者側がその環境を理解しないのであれば仕方ありません。

例えば、ドコモのパーソナルダッシュボードなら、顧客データの活用をわかりやすく説明し、いつでも顧客がオプトアウトできるようになっています。間接的ではありますが、顧客が自分のデータの活用方法を理解し、データを提供するとポイントに還元されたりすれば、顧客とは継続的によい接点を増やせるでしょう。電通としては、今後もドコモさんと良質の顧客体験を追求していきたいと思います。

そして一番注目すべきなのは、ドコモさんの顧客データに対する取り組み(許諾を含む)です。これは他の企業様と比較してもかなりのアドバンテージがあるでしょう。その知見をベースに、日本中の企業様に展開していくことが「docomo data square」を活用していく礎になると思います。

[加藤 翔]
前川さんのお話の通り、ドコモでは長らく、顧客情報に対する取り組みを行ってきました。今後はそのノウハウを電通さんと一緒に世に広め、顧客にはメリットを還元していくという世界を構築できるようにしたいと思います。本日はありがとうございました。

■資料32:パート3サマリー①

■資料33:パート3サマリー②