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ドコモデータ×自社データに秘められた顧客創造ポテンシャル -データ拡張によるデータマーケティング実用性について-

【前編】ドコモデータ×自社データに秘められた
顧客創造ポテンシャル

登壇者 加藤 翔
ドコモデータを活用した新規サービス企画、運営、開発を担当し、プロジェクトを牽引。
ドコモ版データクリーンルームであるdocomo data square(dds)の立上げからPMとして推進。
株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部 プロダクト推進担当 主査


登壇者 前川 駿氏
テレビCMとデジタル広告の統合基盤 STADIAの開発を担当し、プロジェクトを牽引。
現在、Cookieフリー時代の新たなデータ基盤 データクリーンルームの開発支援と導入を推進。 特にデジタル販促領域におけるデータ利活用の推進に注力している。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター
フラットフォーマーデータ部長


登壇者 古池 茜氏
GPSやモバイルキャリアデータなどの位置情報を用いた人流分析や、「TV×デジタル×OOH」のトリプルメディアを活用したオンオフ統合プランニング~効果検証に携わる。
株式会社電通 データ・テクノロジーセンター プランナー

第二回対談「国内最大級のドコモデータを活用したAIマーケティング戦略とは」 では、サードパーティーCookieレスによる広告業界の変化として、データマーケティング領域におけるAI活用事例をご紹介すると共に、Cookieレス時代を見越したドコモのマーケティング基盤「顧客理解エンジン」をご紹介し、そのエンジンが生み出す未来のデータ活用について解説しました。
第三回対談ではさらに掘り下げ、Cookieレス時代における「データクリーンルーム」の必要性や、自社データとプラットフォーマーデータの活用の現状、ドコモが提供する新たなマーケティングの仕組みである「docomo data square」について語っていただきました。

Cookieレス時代の「データクリーンルーム」を中心とした取り組みの必要性

■資料1:パネルディスカッション概要

[加藤 翔]
本日はサードパーティーCookieレス対応の環境変化を踏まえ、前川さんには広告会社の視点から、古池さんからはクライアント様の視点から語っていただきます。ディスカッションに入る前に、今回のパネルディスカッションの概要について、前回の振り返りも含めてまとめます。
昨今、個人情報保護の高まりからサードパーティーCookieレス対応が求められるようになりました。これは広告業界に非常に大きな変化をもたらし、今後はリターゲティング広告や顧客分析・広告効果の可視化も難しくなるでしょう。そのため自社データや外部プラットフォームを利活用することで、継続的顧客分析や広告効果の検証を行う必要が出てきました。このような環境の変化を踏まえ、本日は最先端のトレンドについて以下の資料2に記載された3つのテーマに沿ってお話しします。

■資料2:ディスカッションアジェンダ

ニューノーマル時代のマーケティングのセンター・ピンとは?

まずCookieレス時代の「データクリーンルーム」を中心とした取り組みについて、「データクリーンルーム」とはどのようなもので、なぜ必要とされているのかを前川さんに解説していただきましょう。
[前川 駿]
「データクリーンルーム」の必要性について語る前に、変化するニューノーマル時代のマーケティングのセンター・ピンについて解説しましょう。最近はメディアのタッチポイントも変化し、リアルな店舗ではさまざまなデジタルツールと掛け合わせて販促が行われています。企業にとっては、人口減少傾向のニューノーマル時代において、マーケティングだけでなく、いかに「ブランド・ファン」を育成していくのか、という課題に直面しています。

■資料3:ニューノーマル時代のマーケティングのセンター・ピンとは?
※「the moment of truth」:真実の瞬間。顧客が企業の価値判断をする瞬間のこと。赤字体質に陥っていたスカンジナビア航空をわずか1年で再建に導いたヤン・カールソンにより提唱された。

たとえば一消費者の立場に立って、ブランドのファンになるというのはどういうことなのかを考えてみましょう。
まず消費者はブランドパッケージから得た情報より、さまざまな判断をします。そして消費者がブランドの世界観や価値観に共感し、長期に渡ってブランドと接点を繰り返すことで「自分向きの商品」だと認識し、「幸せ」を感じてくれるかもしれません。その時、ブランドはその顧客体験に寄り添うことが重要です。

顧客一人ひとりの深い理解を通じて、パーソナライズされた顧客体験を継続的に提供していくことが大切です。また消費者それぞれの状況や価値観・ライフスタイルによって、ブランドの立ち振る舞い方も変える必要があるでしょう。つまり顧客とAIの対話による継続的な改善が鍵になります。
このような新しい環境下では、パーソナライズされた顧客体験を提供するためには「データ」が必要です。下図(資料4)に示してあるように、データ&テクノロジー基盤であるAIは、これからますます重要になると考えています。

■資料4:顧客とAIの対話による継続的な改善

一方で、今までユーザーデータを当たり前のように取得してきましたが、これからはユーザーに対して事前に同意を得る形にシフトするでしょう。技術の面でも下図(資料5)のようにGoogleやAppleなどの3rd Party Cookieは、この数年間で取れなくなると予想されています。そこで我々は、Cookieに代わり、お客様のEメールや電話番号を使ってマーケティングをする世界になるのではないかと考えます。

■資料5:広告に関連するIDデータが外部に出てこない世界:3~5年後

Cookieフリーとメーカー主導で許諾の取れた1st Partyデータのリッチ化がカギになる

[前川 駿]
今まで消費者は個人情報がいつ収集されたのか分からず、また本来の趣旨とは違う判定がされることもありました。しかし今後は、プライバシーが重視され、顧客から同意を得たデータでマーケティングを行うようになるでしょう。Cookieレスはともするとネガティブに聞こえますが、むしろ歓迎すべき兆候かもしれません。電通では「Cookieレス」ではなく、「Cookieフリー」と呼んでいます。これは、しっかりと顧客同意を得た情報からよい顧客体験を返したり、役立つデータを提供したりすることを意味しています。

■資料6:Cookieフリー

[加藤 翔]
「Cookieフリー」という呼び方は、これからの時代に即していますね。
[前川 駿]
もちろんすぐ変化が起きるというわけではなく、消費者も少しずつ自分のデータの使われ方について意識するよい機会になると思います。今までは、広告テック事業者がCookieという形で大量に集めたデータを企業に向けて流通させていました。しかし、今後は企業自らが、自社主導で顧客から許諾が取れた1stPartyデータをいかにリッチ化するかが鍵になります。

■資料7:メーカー主導で許諾の取れた1stPartyデータのリッチ化がカギ

インターネットに結線する顧客接点と外部プラットフォームの活用

企業主導で顧客からファーストデータを収集するには、企業側がいかに顧客と繋がっていくのかを考えなければなりません。EC、Saas、SNS、アフターサービスなど商品やサービスによってさまざまなコンタクトポイントが考えられます。

■資料8:インターネットに結線する顧客接点

しかし企業に顧客とのさまざまなコンタクトポイントがあっても、幅広くデータを収集するには限度があります。
自社製品サイトに毎日顧客が訪れてくれればよいでしょうが、顧客は日々自分好みのニュースメディアやSNSなどを頻繁に閲覧しているはずです。つまり効果的に新規顧客を増やしたいなら、自社の1stPartyデータだけでは限界があると思います。

これからの時代は、企業の1stPartyデータに加えて、大規模な顧客情報を持つキャリアやデジタルプラットフォーム企業、EC事業者といった巨大な規模のデータを保有している企業に注目すべきでしょう。そのような事業者とのデータを掛け合わせてマーケティングしていくことが重要になると考えています。

■資料9:なぜ今、データが重要か?

そこで注目されているのが「データクリーンルーム」です。「データクリーンルーム」は、顧客の許諾が取れたデータを保有する企業と、セキュアな状態でデータ連携していくクラウドシステムを指します。たとえばプラットフォーム事業者が許諾の取れた顧客データを提供し、そこに企業の自社データを掛け合わせることで統合的なマーケティングを行う基盤となります。
個人が特定されないセキュアな環境でマーケティングすることで、継続的なPDCAを回していくことが可能になるでしょう。

■資料10:Data Clean Roomとは

■資料11:パート1サマリー①

Cookieレス時代の「データクリーンルーム」を中心とした取り組みの必要性

[加藤 翔]
Cookieレス時代に移行するために、実際に取り組まれている企業がどのくらいいるのでしょうか?
[前川 駿]
クライアント企業様の多くは、今までコンバージョンの最適化を重要視してきました。しかし中にはすでに30%のデータがCookieレスによって使えないという、差し迫った状況になっているクライアント企業様もいるようです。
そのためこのような企業では、Cookieに代わる新しい方法を活用されています。たとえばEメールや電話番号などをコンバージョンにして最適化をかけていくような方法で、すでに乗り換えていらっしゃる企業も多いのではないでしょうか。
今やCookieフリーはネガティブな変化でなく、本質的なデータマーケティングの再設計をするチャンスだと思います。
[加藤 翔]
今後Cookieフリーという考え方をますます広めるには、どうしたらよいのでしょうか?
[前川 駿]
これから、クライアント企業様の広告マーケティングはかなり差し迫った課題が生まれると思います。それは「コンバージョンが追いにくくなった」ことです。Cookieは購買測定ができるので、今まで最適化してきた訳ですが、今後は徐々に計測ができなくなるでしょう。その課題に対して、我々としてはどのような代替手段を提供していくのか、新しいKPIの再設計をしてくのかが重要になります。そしてその解決策が「データクリーンルーム」だと思います。
「データクリーンルーム」のメリットは、Cookieフリー環境でも最適な新規顧客接点が広告を通して持てることや、リピーター・ファン化をより促進できることです。既存顧客の維持だけでなく、新規顧客にも有効な手段だと思っています。
[加藤 翔]
古川さんにもお伺いしたいのですが、「データクリーンルーム」によって企業様が得られるメリットをお聞かせください。
[古池 茜]
メリットとしては大きく2点あるかと思います。1つは新規顧客との接点が持てること、もう1つは既存顧客に対してCRMが行えることです。プラットフォーマー事業者のデータを活用すると、自社データでは従来捉えきれなかった新規顧客に対して、新たな広告プランニングができるようになるでしょう。
そして既存顧客に対しても、購入後どのような状況なのかをきちんと把握して、追加訴求メッセージを出せるようになるでしょう。つまり広告最適化のAX(アプリなどを通してデータやあらゆるデバイスと連携)だけでなく、CX(顧客体験)の向上、DX(デジタル変革)としてマーケティング基盤の変革にまでつながるソリューションだと思っています。
[加藤 翔]
すごいですね! AXだけでなく、CXやDXを改善する手段として「データクリーンルーム」が活用されていくかもしれませんね。今までのお話を伺って、Cookieレスという環境の変化に伴い、徐々に「データクリーンルーム」という概念が広がりつつあるという現実を理解できました。

■資料12・13:パート1サマリー①・②




→中編『自社データ×プラットフォーマーデータによる活用の現状』に続く