マーケティングソリューション

dmenuマーケティングソリューション

国内最大級のドコモデータを活用したAIマーケティング戦略とは -顧客理解エンジンによるデータマーケティングの進化-

【中編】日本最大級のデータ基盤とAI研究実績から
生まれた先端マーケティング基盤 ドコモの「顧客理解エンジン」

登壇者 新谷 哲也
2019年12月まで約5年半の間、大手DSPのThe Trade Deskにてプログラマティック広告の普及に努める。The Trade Desk以前は電通にて10年間デジタルビジネスに従事。20年以上にわたりさまざまなインターネット広告、アドテクノロジー関連事業に携っており、広告プランニングだけではなく、企業戦略立案・投資まで幅広い経験がある。2021年7月より現職。現在はNTTドコモの広告ビジネス全般を担当し同社の広告事業拡大に尽力している。
株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部プロデュース推進担当部長
※6月時点の所属部署になります。


登壇者 吉田 岳人
2000年、新卒入社以降、ドコモ歴22年。法人営業→新規事業開発(メロディコール)→プロダクト企画(D800iDS/N703iμ)→コンテンツ開拓(iコンシェル)を経て、2013年以降、広告ビジネスを担当し、今年で10年目に突入。運用型の”メッセージS”、ドコモ版データクリーンルーム”docomo data square”の開発など、デジタル広告の進化に携わる一方、DOOH事業を営む”LIVE BOARD”、デジタル販促商品を扱う”DATA ONE”、”Prism Partner”など、ドコモの会員データを活用してマーケティングを推進するJVの設立に従事。
株式会社NTTドコモ
マーケティングイノベーション部プロダクト推進担当課長

パート1では、今後マーケティング業界においてAIの積極推進と、Cookieレス環境下でのファーストパーティデータの確保と活用が必要となり、その一つの解としてAI活用によるデータマーケティングの進化が求められるとお話しました。また、AIへの先行投資が経営課題としても重要なイシューであることもお伝えしました。
パート2ではドコモの「顧客エンジン」(ドコモのAI活用戦略とデータ基盤)をご紹介していきますが、その前にドコモのデータについて少し解説します。

■資料5:第2回対談パート1振り返り

(1)ドコモは日本最大級のプラットフォーマー

[新谷]
ドコモは、データプレイヤーとして日本最大級のプラットフォーマーと自負しますが、皆さまがドコモと聞くと「iメニュー・dメニュー」をはじめとしたメディアの会社という印象が強いのではないでしょうか。しかし実際は、約8,900万人もの会員数を誇るdポイントクラブを中心とした日本最大級のプラットフォーマーです。

■資料6:ドコモデータの強み-安心・信頼性における優位性-

その中には顧客属性や位置情報、アプリ利用情報、キャリア決済、dポイントカード提示情報などの顧客データを保持しています。このような情報を元にドコモが持つメディアだけでも国内ではトップクラスのリーチとデータ量を誇ります。

■資料7:ボリュームが国内トップクラスのドコモデータ

またNTTグループはテクノロジー開発の企業として、今まで多くのAI開発による技術投資を行ってきました。例えばデータ分析協議会「KDD CUP 2020」で入賞したり、「ドコモAIエージェントAPI」をオープン化し協創を推進したりしています。このように昔からテクノロジーに対する先行投資を行ってきました。

■資料8:ドコモ広告プラットフォームのデータだけではないAI戦略


(2)未来のお客様の行動を予測する

ここまではドコモのデータとAI戦略をお話しましたが、次は吉田さんにドコモデータの広告AI活用について解説してもらいます。


[吉田]
先ほど新谷さんから、ドコモは顧客のデモグラフィックデータや位置情報など、多種多様なデータを持っているというお話がありました。その中でも特筆すべきはキャリアが持つ位置情報だと思います。
例えば皆さんがスマホでゲームを楽しむ時、GPSを使った位置情報ゲームをご利用になった場合、たくさん利用するとスマホ本体の電池容量が早く減る、ブラウジングが遅くなるといったことに悩まれることもあるでしょう。しかしNTTドコモは通信事業者なので、音声通話サービスや通信をするために裏側で基地局と呼ばれる通信ネットワークにつながっており、その情報をもとにGPSを使わなくても顧客がどこにいるのかをつかんでいます。それがキャリアならではの基地局位置情報(UETrace)と呼ばれるものです。

そしてこの情報は通常の携帯電話を使っている間の通信なので、電池の減りも心配ありません。またこのデータはGPSと比較しても圧倒的に情報量が多く、その人がどこにいるのかという情報だけでなく、その人がどのような動きをしているのか点で示された情報もつかむことができます。
さらには過去のデータも蓄積しています。つまり大量のデータをAIが解析することで、過去のデータから未来のお客様の行動も予測することができます。このような形でキャリアの位置情報をAIと組み合わせて活用していくことで、より広告効果が高まる施策につなげていくことが可能になります。

■資料9:ドコモ広告プラットフォームのデータだけではないAI戦略

また、取り組んでいる顧客理解の一つにプロファイリングというものがあります。様々な顧客データの集合体がありますが、位置情報を中心とした集合体は、ランダムにサンプリングした集合体に比べてどのような特徴があるのか、スコアリング(プロファイリング)することができます。例えば特別に抽出した顧客データからわかることは、コロナという条件が加わり宅配デリバリーが特に多かった、その中にはVOD(動画配信サービス)の利用者が多く含まれているといった顧客の傾向をつかむことができます。多種多様なデータから顧客動向を分析することができます。
(注:位置情報データはお客さまの情報と紐づかないようグループで分類 (クラスター化)されています)

(3)顧客理解エンジンのメリットとは

■資料10:AI技術を生かした「顧客理解エンジン」とは

[新谷]
「顧客理解エンジン」の最大の強みは何でしょうか?
[吉田]
先ほど新谷さんもおっしゃっていましたが、AIを活用するには、まずはデータがたくさんあることです。ドコモは約8,900万人の会員データがあるので、顧客数のボリュームだけでなく利用サービスの多種多様な形態など、深さと幅があるというのが一つの特徴です。
また今までのAI利用はインターネット空間の中だけでしたが、通信事業者であるNTTドコモはリアルな顧客情報を持っています。サイバー空間の情報だけでなく、フィジカル空間の情報も持ち合わせ、それらを統合して顧客理解につなげられるのが、大きな強みの一つです。
[新谷]
NTTドコモの保有データ量が多いということと、オンライン・オフライン(サイバー・フィジカル)の両方のデータを持っていることがNTTドコモとしての強みの一つであり、それら膨大なデータをAIで分析し、その結果がさらなる強みにつながるということですね。

これは次のパートの話になりますが、「顧客理解エンジン」をマーケティングに使っていくと、どのようなメリットが生まれると思いますか?
[吉田]
顧客理解エンジンにプロファイリングする機能があるとお伝えしたのですが、例えば特定のエリア(街)の傾向を特徴付けることができます。具体的には銀座・巣鴨など特定エリアに居住されている顧客のデモグラ情報は一般的に知られていますが、内面的な趣味趣向や行動傾向は知られていません。つまり今までは表面的な情報でしかなかった部分から、よりインサイトに攻めた情報を取得可能にしたものが「顧客理解エンジン」の特徴です。
[新谷]
私のほうでも「顧客理解エンジン」で分析をしたところ、非常に面白い結果が出ました。吉田さんが解説された内容につながる話です。ある若手世代のペルソナ・特徴を分析したところ、こんな社会環境(コロナ渦)でも駅前にたくさんいたり、乗り換え案内のアプリを使っていたり、コミュニケーションツールはLINEがマストだったり、SNS(TikTokやInstagram)は動画で使っているなどといった分析結果が出て、その分析結果はまさしくNTTドコモが位置情報や、サイバー・フィジカル合わせた情報を持っているからこそできたことです。
そして分析結果をAIによって拡張していくことで、予兆ユーザー(今後さまざまな見込みがあると予想される顧客)としてターゲティングを拡張できるように使っていくことが「顧客理解エンジン」なのだということをリアルに理解できました。

■資料11:第2回対談パート2サマリー



→後編『「顧客理解エンジン」が生み出すマーケティング革命と未来を見通すデータ活用の進化』に続く